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第三章 魔女裁判
それはあまりにも信じがたい出来事だった。
エルカナが僧兵達を率いて人身売買組織を取り押さえた後のこと。なにやらただならぬ雰囲気が修道院の中に漂い、マルコが聞かされたのは、エルカナが魔女として捕らえられたと言う事だった。
何故そんな事になったのか、マルコには理解出来なかったし、したくもなかった。この話を聞かされたアマリヤも、突然の事に戸惑うばかりで、この事が事実だと受け止められているのかどうか疑問だった。
「どうして……なんで……」
アマリヤに縋って泣き崩れながら、マルコはエルカナが捕らえられた理由を頭の中で何度も反芻する。それは、魔女で無い者も魔女として裁き、人心を惑わせたためと言うものだった。
人々のためを思って、自らの手で悪を裁く。その役割を担っていたエルカナが魔女とされるなど、皮肉だと済ますことがマルコには出来なかった。
足下がおぼつかなくなるほどに泣いて、かける言葉が見付けられないと言った様子のアマリヤにしがみつきながら、マルコは僅かばかりでも希望がないかと思考する。
魔女として告発されて、無罪を勝ち取れた例はあまりにも少ない。それでもなお、これは何かの間違いなのだと、エルカナは無罪なのだと信じたかった。
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