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それから数日後。マルコはエルカナが人身売買組織の件について、エルカナが話を詰めてきたという事を、本人から聞いた。
「依頼人は、どの様な方でしたか?」
そう訊ねると、エルカナは不思議そうな顔をして答える。
「それが、旅のサーカス団の方だったんです。
旅の方が依頼してくるにしては不思議な依頼だとは思いましたけれど、もしかしたらどこかの旅先で、団員の誰かが攫われたりしたのかも知れませんね……」
話すうちに表情が暗くなっていくエルカナを見て、マルコも気持ちが落ち込んでいく。そんな事はあり得ないと思いながらも、もしエルカナ達が返り討ちに遭って、エルカナがどこかで売られるなどと言う事になるのだけは、どうしても厭なのだ。
「ああ、そんな顔をしないで。
大丈夫ですよ、私たちは上手くやりますから」
心配そうにマルコを見上げたエルカナの手が頬をなぞる。
「そうですね。エルカナさんが取り返しの付かない失敗をするわけがありませんものね」
不安を消し去ろうとそうは言ったけれども、マルコの不安は消えない。何故だか、任務以外にも不吉なことが有る様な気がして仕方ないのだ。
けれども、それをエルカナに言う事は出来なかった。
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