SFの湯

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 同時に、朝ごはんも用意し、洗濯機をまわす。海斗が朝のアニメに夢中になっているわずか10分ほどの間に物干しを終え、自分の身支度を整える。  ひっくり返る皿や、生き物のように床へ脱走するフォークと格闘し、海斗に朝ごはんを食べさせたら、歯を磨いてゴミと荷物を片手に家を飛び出す。  保育園であれこれ朝の連絡を済ませたら、今度は満員電車に飛び乗る。  ひん曲がったどら焼きのように惨めな体制で吊革にぶら下がり、会社のビルではエレベーターの列に並ぶ。    仕事はJavaのSE、通称IT土方(どかた)だ。  定時は17時半、深夜まで残業を続ける同朋の脇をすり抜け、また夕刻ラッシュの波へダイブ。  トラブル発生時には、近郊に住むケイの父親にお迎えを頼む。  孫のためならと車を飛ばしてくれるのが有難いが、相撲ファンなので取り組みのある日はあまりいい顔をしない。  矢のようにチャリを漕ぎ、海斗を迎えに行く。 「遅くなってごめん! 遅くなってすみません」  2種類の謝罪を経て、スーパーへ急ぐ。  エビのようにバタつく息子をカートに載せて「お菓子はひとつだけだよ」と釘を差す。  もろもろ済ませて寝かしつけ、ノートパソコンを立ち上げる。  持ち帰りの業務に(いそ)しみ、就寝は12時を少し回る。    もう、片腕もあがらないほど疲れているときも、風呂には入れなければならない。     
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