SFの湯

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 会社からボロ雑巾のようになって帰るなり、ビールを干して歯も磨かずに寝てしまう。  或いは、「お風呂っていいなあ」と、(のたま)いながら、風呂の排水溝を1年以上、あるいは一度も見たことのない人ではないだろうか。  ケイは働きながら、男手ひとつで3歳の息子を育てている。  いわゆる、シングル・ファザーだ。  忙殺される日々の息抜きに、マンガを読んだり、自分でも短編を書いたりするのが趣味。  この短編コンテストは毎回レベルが高く、挑戦のしがいがある。  ランキング上位30位がちゃんと発表されるので、腕試しにと投稿し続けており、先日やっと一番下に名前が載った。  張り切っていたところだったのだが、気分が沈んだ。    正直、風呂は面倒だ。  それは、一番疲労の溜まっている時間帯に、まとめて押し寄せる家事のひとつでしかない。  5月に入って少しずつ気温もあがってきたし、自分ひとりならば、シャワーでぱぱっと済ませたいところだ。    ケイの睡眠は、平均6時間。  朝は6時に起きて、小麦アレルギーの海斗のために、保育園のお弁当を作る。  冷凍食品はほとんど使えないから手作りだ。  愛情たっぷり、と言いたいところだけれど、加熱不足が怖くて焦がしたり、時間がなくて昨晩のリメイク料理が登場することもある。     
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