シングル・ファザーの湯

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 意地で子育てをしているわけじゃないんだ。 「ほら、おいで」    ケイは、海斗のために、カランの温度をぬるめに調節する。  まだ蒙古斑が残る尻を、洗い場のイスに座らせ、目にお湯が入らないよう気を付けながら髪と体を洗う。  次は、ケイの番だ。  海斗を膝の間でキープしながら、自分の身体を洗った。  さて湯船へ、と立ち上がると、隣に赤く火照った巨大な体が見えた。 「こんばんはー」  海斗がその大きな人物に、挨拶をしている。  親しみを込めて、というよりも、怖いという気持ちをごまかすかのように、か細い声で。  ふたりは、ばっちりと目を合わせていた。  ケイは反射的に、海斗を抱き寄せたが、相手はすぐに相好を崩した。  頭にはちょんまげ。 「おすもうさんだよ、海斗!」    海斗は、わああ、と目も口も全開になった。  言ってしまったあと、失礼を詫びるつもりで、頭を下げる。湯船へ移動し、うっとりとその巨体を眺めた。  一般的な肉体美とはまた別種の、のびやかな曲線が面白い。  両肩の肉が、テレビで見るのと同じ、独特の弾力をもって、ぶるんぶるんと揺れている。  わしわしとタオルを使って、全身を丁寧に洗っていき、ざばあと水をかけると八方に滝ができた。     
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