1章

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 目の前を、忙しそうに警察の人達が走って行く。そしてその後ろをTVのカメラやリポーターらしき人達がついて行く。近所の人達も、好奇心でいっぱいの眼で、その様子を見ている。  この街がこんなに大騒ぎになったのははじめてなのだろう……。  僕もこの街に住むようになって、そんなに長いわけじゃないけど、こんな騒ぎははじめてだし。 閑静な…と言う訳じゃないが、この辺りは古い住宅街で、皆昔から家族ぐるみで住んでいたりして、すぐとなりに出来たきれいなニュータウンとは雰囲気すら違う。  そのニュータウンには、若い新婚夫婦や家族が多く、なんだか道路も広くてゴミひとつ落ちておらず、おとぎ話に出て来るようなレンガ造りの壁のある可愛い家が建ち並んでいる。  そこのニュータウンの奴らと、僕ら古い街の連中とで一度だけ喧嘩した事がある。  まあいわゆる抗争とかいうのかな?  とに角お互いが気に入らなかったんだ。総勢二十といったところか? そりゃ大騒ぎになった。でも怪我した奴もいなかった。  実は喧嘩をはじめてすぐに、近所に住む誰かが警察に通報したからだ。  僕らは慌てて逃げ出した。  誰も捕まらなかったけど、喧嘩は一時お預けという形になった。でもいつか必ず決着をつけるつもりだ。  そんな喧嘩ぐらいが、この辺りでの大きな事件だった――はずだった。  僕だって興味津々だ。  だってまさか、こんな近くで「殺人事件」が起こるなんてさ。
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