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僕はアパート近くの家の塀のかげから、二人をそっと窺った。
トシオと彼女は、しばらく何か言いあっていたが、彼女はすぐに家へと帰っていった。
どうやら、トシオの家は彼女にとっての、ちょっとした避難場所だったらしい。
「奥さんもね…たまに顔に痣をつくってたり…」
他の誰かが、またカメラに向かって話している。
そうだ…。
僕も見た事がある。
近所の誰かに「どうしたの?」と聞かれて、「ちょっとぶつけて…」とか適当な事を言ってたっけ。
「こんな事になるなんて…信じられないわ」
「すみません。あまり話した事はなくって……」
「強盗なんですか? 恐いわぁ」
みんな勝手な事ばかり言ってるな~。
僕は人垣からそっと警察の人を見て、声を掛けた。
「僕、犯人知ってるよ」
だけど、僕のような子供には耳なんかかしてくれない。警察は邪魔そうに僕を払い除けると、さ
っさと行ってしまった。
僕は犯人を知ってるんだ。
だって……僕はずっと見ていたんだから。
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