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ドアの方を振り向くと、あの唯ちゃんが立っていたのだ。
「唯ちゃん?」
「知り合いかい?」
山本先生は、不思議そうな顔で見ていた。
「はい、ちょっと…昨日屋上で知り合いになって。」
唯は、とぼとぼと歩幅小さく近づいてきた。僕は、また心臓がドキドキするのを感じた。
「唯ちゃん、また遊びに来たのかい?山本先生に会いたくなって?」
「そうよ?また会いに来てあげたわ 笑 って今日は違うの、悠くんがリハビリを始めるって看護婦さんに聞いて。」
僕は2人のやり取りに驚いていた。
「悠くん、山本先生は最初は優しいけど、だんだん厳しくなるかもよ~?でも、諦めないで頑張ってね!悠くんは絶対治るんだから。〝冬は必ず春となる〟だからね。」
「冬は必ず春となる…?」
「そうよ。冬は寒くて辛いけど、そのあと暖かい春が必ずやってくるでしょ?それと同じように、今は厳しい現実があっても、必ず希望あふれる日はやってくるの。悠くんも同じよ。大丈夫。」
僕は、初めて聞いた言葉だった。でも、なんだか凄く心に染みる言葉だった。
「ありがとう。ちょっとのことで弱気になっちゃだめだよな。こんなにみんなが応援してくれてるのに。」
「そうよ、それで早く悠くんのカッコいいスノーボード姿を見せてちょうだい。」
「なんでスノボのこと知ってるの?」
「あ、看護婦さんから聞いちゃったの。ごめんね、勝手に聞いちゃって…。」
「いや、てかカッコイイ…」
僕は、少し照れくさかった。
そう言った唯ちゃんも、少しうつむいていた。
「なぁんだ?そういうことか?」
山本先生は、2人を茶化すかのように言った。
「ちょっ、先生違うってば!」
唯は、即座に否定した。僕は、違うのかとちょっとがっかりしてしまった。でも、唯ちゃんは僕を励ましてくれようとしてくれたのは事実。それが凄く嬉しかった。
その日、唯ちゃんは、僕のリハビリに付き合って、小さな声だったけど、精一杯応援してくれた。
「じゃあ、悠くん、これからは16時に屋上で会いましょう?私、青空と夕焼けの間が1番好きなの。」
「うん、いいよ。そうしよう。」
僕たちは、これから会う約束をした。毎日の楽しみができた。
「じゃあ、2人ともまたねー!」
唯は、そう手を振って、リハビリステーションをあとにした。
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