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「そう、獅子ってライオンのことなんだけど、ライオンって百獣の王でしょ?一番強いでしょ?だから、何があっても、負けないって意味なんだって。だから、私もこの病があっても、絶対負けないの。」
唯は、そう言って涙をこらえてるように見えた。
その瞬間、僕は、唯を抱きしめた。
「そうやって生きて来たんだね。偉いよ、唯は。僕には出来ない。好きだよ、唯。」
思わず言葉に出てしまった。そして、
唯のくちびるにそっとキスをした。産まれて初めてのキスだった。
唯は、僕の背中にそっと手を回した。
唯も同じ気持ちだった。
「私も悠くんが好き…。私、悠くんに出逢うためにここまで生きてきた気がする。」
「そんな大げさだよ。俺に出逢うためだなんて。」
「そんなことないわ。私、キスするの初めてだった。それが悠くんで嬉しい。キスってこんな感じなんだね。」
「そういうこと、口にするかフツー。」
僕は、照れて何も言えなかった。
そして、2人で手を繋いだ。
そのころ、立花先生が忘れ物をして、唯の病室に戻って来ていた。
「あった、あった。この辞書がないと困るんだよなぁ。あ、ついでに屋上寄って行くか。唯ちゃんがいるかもしれないしな。」
キーっ。扉を開けた瞬間、唯は悠と手を繋いでいた。
「誰だ、あいつは…。」
2人は、立花の存在になど気づかずにいた。
ただ、幸せな空気に浸っていた。
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