第三章 少年期【下】

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「と言う訳で、負けた罰だ。私の代わりに料理を作ってくれ」 「それは罰ゲームに入ってないはずですけど」 「だって、今考えたから」  酷い、普通に酷い。 「それに……」  お母さんは椅子に座り、テーブルに肘をついて嬉しそうな顔でこう言った。 「息子の手料理を食べたいのは親として当然だろう?」  何も言える訳もなく、僕はこの三年間で学んだ料理を披露することになった。  お母さんに料理を作ってあげるのはこれで三度目か。  一度目は失敗して炭になったけど、お母さんは「美味しい」と言ってくれた。嬉しかった。  二度目も失敗して、味がおかしくなった。でも、お母さんは「良い味だ」と言ってくれた。嬉しかった。  そして三度目の今。初めて成功させよう!  体にやる気を充満させて、包丁で野菜を切っていく。  フライパンを使い、鍋を使い、炒め、煮込み、焼き、そして…… 「……ごめんなさい」  当然のように失敗した。僕の料理の腕は壊滅的に酷いものだ。変えようがない運命かのように。 「あらまあ。でも、今までで一番良いんじゃない? 野菜は一部だけしか焦げていない。それさえ見逃せばいい感じだと思うけど?」 「それでも失敗したことに変わりありません……」 「なら、次は成功するね。楽しみにしているよ」  お母さんは焦げた野菜を口に運んで、いつもの通りに僕にこう言う。 「うん、美味しい」
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