234人が本棚に入れています
本棚に追加
「と言う訳で、負けた罰だ。私の代わりに料理を作ってくれ」
「それは罰ゲームに入ってないはずですけど」
「だって、今考えたから」
酷い、普通に酷い。
「それに……」
お母さんは椅子に座り、テーブルに肘をついて嬉しそうな顔でこう言った。
「息子の手料理を食べたいのは親として当然だろう?」
何も言える訳もなく、僕はこの三年間で学んだ料理を披露することになった。
お母さんに料理を作ってあげるのはこれで三度目か。
一度目は失敗して炭になったけど、お母さんは「美味しい」と言ってくれた。嬉しかった。
二度目も失敗して、味がおかしくなった。でも、お母さんは「良い味だ」と言ってくれた。嬉しかった。
そして三度目の今。初めて成功させよう!
体にやる気を充満させて、包丁で野菜を切っていく。
フライパンを使い、鍋を使い、炒め、煮込み、焼き、そして……
「……ごめんなさい」
当然のように失敗した。僕の料理の腕は壊滅的に酷いものだ。変えようがない運命かのように。
「あらまあ。でも、今までで一番良いんじゃない? 野菜は一部だけしか焦げていない。それさえ見逃せばいい感じだと思うけど?」
「それでも失敗したことに変わりありません……」
「なら、次は成功するね。楽しみにしているよ」
お母さんは焦げた野菜を口に運んで、いつもの通りに僕にこう言う。
「うん、美味しい」
最初のコメントを投稿しよう!