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翌日の朝。僕たちは街に行くところだった。
家を出て遠くに行くのは初めてだ。何だか体がざわついている。ムズムズすると言うか、何と言うか……よくわからない気持ちが溢れてくる。
綺麗な服を着て、僕の準備は終わった。後はお母さんの準備を待つだけなのだが、中々終わらない。何をしているのかと聞いても曖昧な返事が返って来るだけ。部屋にも入れてもらえない。
部屋の前に座り込んで、お母さんが出てくるのを待つ。
「おまたせー」
やっと準備が整ったようだ。
扉が開かれて出てきたお母さんは……
「……どちら様ですか?」
お母さんのようだったけど、お母さんじゃなかった。髪はお母さんだけど、顔がちょっと違う。いつの間に他人と入れ替わったのだろうか。これも手品の一種か?
「いやいやいや。お母さんですけど。ノアのお母さんですけど?」
声も似ている。でも、騙されないぞ。これはお母さんを騙る偽物だ。
「いやいやいや。何で構えてるの? なに、私と戦う気? せっかく化粧したのに、台無しになるじゃないか」
「……化粧?」
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