第三章 少年期【下】

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「そう、化粧。女は外出する時、顔に色んなものを塗って綺麗に見せるんだ。その気になれば、別人みたいになることも可能だよ。どう?」  どう、と聞かれても……  その質問に答えるべき答えは一つしかない。 「神様みたいです」  素直にそう答えた。 「神様、か。悪くないけど、せめて傾国の美女と言って欲しかったな。そっちの方が語呂的に良い」 「あれって本当に国が傾くほど綺麗なんですか?」 「正直な話、国を治めている権力者のタイプだったらそれは傾国の美女になる。太っている人が好きならその人は傾国の美女と呼ばれる。顔が整っていない、所謂不細工と呼ばれる人でも、権力者がそれを気に入ればそう呼ばれる。曖昧なものなんだよ。と言うか、話を逸らそうとしているな?」  バレた。目を逸らして出来もしない口笛を吹く。 「まあ、いいさ。街に行ったら散々こき使ってやる。それこそ荷物持ちから食事の世話まで一通りに。まるで執事のように」 「僕は騎士じゃないんですか?」 「それはそれ。これはこれ。じゃあ出発だ」  はぐらかされた。話を逸らしたのはどっちだろう。  家の外に出て、お母さんが扉の鍵を閉める。普段は閉めたことがないけど、三年前のある日を境にして鍵を閉めるようになった。その理由は聞いていない。聞いても無駄だからだ。     
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