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手を差し出してきたので、これは握手だと思い、手を出して握った。お母さんとアベルさん以外の人の手を握るのは久しぶりだな。
「あなたの手……何だか硬いわ」
いつも畑仕事をしているから手の皮が硬くなったんだろう。
「お母さんの仕事を手伝っているからでしょうね」
「当ててあげる。……農家の人?」
「多分正解ですね。なんでわかったんですか?」
「私、超能力者なの」
一瞬言葉を失った。この人は何を言っているのだろう、そう思ったからだ。
僕が目を丸くしていると、彼女は嬉しそうな顔をして小さな声で笑った。
「冗談よ。そんな人、この世界にいる訳ないじゃない」
「で、ですよね。ビックリしました。そんな冗談を言うなんて……しかも初対面の人に」
「君が硬い顔をしているから和ませようと思って」
硬い顔……鏡でも持ってこないと自分じゃわからない。
「で、ちょっとお話しない? 私、退屈しているの」
「でも、ここで話をすれば皆の邪魔になるんじゃあ……」
「大丈夫よ。今は私たちしかいないもの」
周りを見回してみる。いつの間にか本を読んでいた人たちはいなくなっていた。ここにいるのは僕たちだけだ。だったら多少大きな声を出しても文句は言われないだろう。
でも、そんなに時間が経っていたのか……お母さんはまだ戻ってこないのかな。
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