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「ノア、どうする? このままミナちゃんとお話を続ける?」
「いえ、別に良いです」
「ノアは酷いね。ねー、ミナちゃん?」
同意を求めるお母さん。それに乗るミナさん。同じ女の人だからだろうか、息が合っている。
不思議だな。僕とアベルさんの息が合っているのも同じ理屈だからかな。
「それじゃあ、遅くならないうちに家に帰ろうか。またね、ミナちゃん」
「はい。また、です。……ノア、またね」
椅子から立ち上がって、軽くお辞儀をしてその場を去る。
僕たちが図書館から出る間、彼女はずっと手を振っていた。縁があったらまた会う可能性があるかもしれない。一応、名前と顔は覚えておこう。
外に出ると、夕方になっていた。太陽が地平線の下に隠れそうなぐらいの時間。半日以上、街にいたのか。それはそれでびっくりだ。
「あ、ノア。ちゃんとタブレットの中に本を入れた?」
「それが……ネットの繋ぎ方がわからなくて……」
「あちゃー。それは盲点だった……。仕方がない、アベルに頼んでおこう」
そう言えばアベルさんが住んでいるところは何処なんだろうか。街に来る間、他の家なんて見えなかった。建物も、何も見えなかった。あるのは森と畑。そして地平線だけだったのに。
手を引っ張られて街の出口に向かい、また景色が変わる。
街の賑やかな声や人の気配は一瞬で消え、周りには畑と木、そして見渡す限りの地平線。気づいたらこうなっていた。本当に不思議だ。
「ミナちゃん。良い子だったね」
「そうですか? 僕にしたら苦手なタイプです」
「アハハ! ノアは女の子が苦手なのかな? だったら将来、結婚出来ないぞ?」
「別に構いませんよ。お母さんがいればそれで十分です」
「おや? それは私と結婚したいというプロポーズかな? 嬉しいけど、ムードが足りないな。四十点が良いところだ」
厳しい判定だ。せめて八十点は取れるように頑張ろう。
そのまま家に帰り、いつも通りに過ごし、日は過ぎていく。何事もなく、平和に。ミナさんと言う女の子の存在を忘れるぐらいに。
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