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でも、街に行けるのならそれはそれで楽しみだ。何せ、実に三年ぶりなのだから。
「そう言えば母さん。一つ聞いて良いですか?」
「一つと言わずに何個でも聞きたまえ」
「僕たち以外にこの辺に住んでいる人はいないんですか?」
三年以上六年以下思い続けてきた疑問を今口に出した。
僕たちはずっとここに住んでいるけど、アベルさん以外の人を見かけたことが一度もない。それはただの偶然なのか、それともここが田舎過ぎるのか。
「いないね。ここら辺は私たちしかいないよ」
「じゃあ、アベルさんはどこから来ているんですか?」
「アベルは……その……遠くから来ているんだよ」
何か曖昧な解答だ。色々とツッコミたいけど、これ以上聞いても濁されるだけだ。無理な詮索は止めよう。
「質問は以上かな?」
「はい。ありがとうございます」
「お礼なら今晩の料理を作ってくれ。久しぶりにノアの手料理が食べたい」
「良いですよ。何が良いですか?」
「なんでもいい!」
それが一番困る。
今なら六年前に母さんに初めて言ったその言葉の意味がわかる。その答えだと非常に、面倒だと言う事を。
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