第四章 青年期【上】

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「……なんか、凄い人だね」 「六年間、一緒に過ごしていますけど、今日の母さん何かおかしいんですよね」 「六年間? 本当のお母さんじゃないの?」  しまった。これは言ってはいけないことだったことをすっかり忘れていた。僕が元奴隷とわかれば、ミナさんは態度を変えてしまう。何とかしてここを切り抜けないと……! 「実は……身寄りのない僕を引き取ってくれたんだ。十二歳に本当の両親と別れてからだから六年。僕を本当の息子だと思ってくれている素敵な人だよ」  嘘は言っていない。ただ、少しだけかすっているだけの内容だ。  これで何とか誤魔化せただろうか。不安だ。 「そうなんだ。私と一緒だね」 「……一緒?」  まさかこの人も元奴隷なのか……? でも、それだったらイジメられているはずだ。  奴隷は国が認めていない。だから奴隷には人権と言うのが存在しないと昔母さんに教わった。 『国が認めていないから奴隷には自由がない』  おかしな話だけど、そう教わっている。だったらなんでミナさんは…… 「私はね、孤児だったの。十歳の時かな、交通事故に遭って、お父さんとお母さんは車に挟まれてペッちゃんこ。私だけが生き残ったの」     
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