第七章 残酷を告げる詞

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 ■ノア■  気が付けば、僕たちは街の中にいた。  いつものように、街を歩く人たち。  いつものように、店は営業している。  あの出来事が全て夢のように思えるほどに、いつも通りだった。  でも、僕ははっきりと憶えている。あの言葉を、あの声を、あの優しさを。  そのことを思い出すだけで、また涙があふれてくる。  母さんは死んだ。死んでしまった。二度と逢えなくなったのだ。  僕は人目もはばからずに大声で叫んだ。  母さんのことを、母さんの名前を。  大切な、大好きだったあの人の記憶を。  全てを出し切るかのように、声が枯れるまで、声が出なくなるまで叫び続けた。  
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