第一章 少年期【上】

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「ふむ、なんでもいい、か。それはまた無茶な注文だな。それは世界中のお母さんを敵に回す発言だぞ? なんでもいいと言っても作ったものに文句を言われては困る。とにかく、文字通り『なんでもいい』から何か言いなさい」  本当になんでもいいのに……何でこの人はここまで僕のこと世話をするのだろうか。  僕が好きだったものを微かな記憶を頼りに思い出す。 「……シチューが良いです」  残っていた記憶の中で思いだしたのは、売られる前に母親に作ってもらったシチューだった。あれが出た日は一日中幸せな気分でいられたものだ。 「シチュー、か。うん、良いね。それじゃあ今から作るから……そうだな、数十分くれ。その間、君は眠っていると良い。さっき案内した部屋のどれでもいいからそこで寝ていなさい。出来たら起こしてあげる」  僕の飼い主は、僕のことを信頼しているようだ。  もし僕がここから逃げ出したらどうする気なんだろう。殺すのかな……。それでも構わないけど、本当に……本当に自由にしてくれるのなら……  言われた通りに空いている一つの部屋に移動し、そこに置いてあったベッドに座る。  程よい弾力がするベッドだ。こんな上等なものを僕が使って良いのだろうか。  そう思っていたのだが、そこに座るだけで眠気が襲って来た。ゆっくりと目を閉じていくと、体は重力に従ってベッドの上に倒れた。  そして僕はそのまま寝てしまった。   ■■■ 『夢を見た。     
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