第一章 少年期【上】

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「母親ってのは凄いもんだな。我が子の為なら自分の命を差し出す、泣ける話だね。だけどよ、俺たちは金を要求したんだ。なのに、あんたは持ってこなかった。交渉は決裂。親子ともども、死んでもらう」 「――っ!? 息子だけは……ノアだけは止めてくれ!」  必死にお願いする。ノアの命を助けてもらおうと必死にすがる。 「おい、俺たちは人殺しをする為に来たんじゃねえぞ」 「仕方ねえだろ。顔を見られた以上、警察に言われたら俺たちは捕まる。だったらここで証拠を隠滅するしかない。あんな田舎だったんだ。人が二人死んでも誰も気づかないさ」  ノアが地面に放り投げられる。その衝撃のせいで、ノアが小さく呻き声をあげた。だけど、まだ意識は取り戻していない。  ノアを放り投げた男が懐から果物ナイフを取り出した。 「や、止めてくれ……! 頼む……お願いだ……!」  私の願いを聞き入れずに、男はノアの首にナイフを当てる。そしてナイフはノアの首を切る――と誰もが思っただろう。  だけど、その未来は訪れなかった。私が阻止したからだ。  私は自分の腕の形を変えてそれを伸ばし、男の手からナイフを落とした。  この場にいる男どもの驚きが見える。驚き過ぎて声が出ていない、体も動いていない、口が開いている。  出来る事なら、穏便に解決したかったのだが、それは無理らしい。     
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