第一章 少年期【上】

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「な……な……」  やっと声が出たみたいだ。だけど、声にならない声だ、言葉になっていない声だ、悲鳴になっていない声だ。  その声がどのような言葉に変わるのか予想して、私が代わりに答える。 「『なんで、お前は……!?』か? 見ての通り、化け物だよ。本物の、正真正銘の化け物さ」  腕を元に戻してノアを地面に寝かせる。丁寧に。  そして逆に私はゆっくりと立ち上がり、周りを見る。 「世界では化け物と呼ばれるものが幾つも存在する。吸血鬼、妖精、ゾンビ、妖怪、悪魔。どれもこれも簡単には殺せないが、その気になれば殺せる。無論、私も例外じゃない。ある手段を使えば私は死ぬ。でも、それは私以外知らない。だから私を殺せない。……まだ説明は必要か?」  刺された傷も回復した。これで元通りだ。が、とはいかない。  元通りにするのには、この私の中で燃え盛っている怒りの炎を鎮めなければいけない。  鎮める方法は一つだけ。こいつらを皆殺しにすることだ。それを実行するのにも多少時間はかかるが、少しの間だけお話をしてやろう。     
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