第一章 少年期【上】

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 ■ノア■ 「……うっ」  目が覚めた。ここはどこだろうか……  ……見覚えのある天井。僕の部屋の天井だ。と言うことは、ここは僕の部屋で……  体を起こすと、僕が寝ていたのは僕のベッドの上だと言うことがわかった。  あれは夢だったのだろうか……。でも、はっきりと思い出せる。あの人たちの顔を、あの声を、そして……袋に入れられたことを……  確認する為に急いでリビングに向かう。もし、夢でなければリビングは荒らされているはずだ!  リビングの扉を開けて、中を確認する。 「おや? ノア、起きたのか?」  お母さんが台所で料理をしていた。  周りを見回しても荒らされた形跡はない。どうやらあれは夢だったようだ。  安心したので、ホッと息が出る。 「なに慌てているの? もうすぐ御飯だよ。顔でも洗ってきたら?」 「あ、お母さん……いつの間に帰ったんですか……?」 「うん? ついさっき。ノアはテーブルの上で寝ていたから運んであげたよ。そして私は料理の最中」 「………………」  下を向く。 お母さんが帰ってきてくれたのは嬉しいけど、何の役にも立てなかったことが悲しい。せっかく一人の時間があったのに……     
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