第二章 少年期【中】

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 唇に指を当てて、僕の口を塞いだ。これは本当に話してはいけない、と言う合図だ。守らなくては。 「四季――文字通り、四つの季節だ。一年は春から始まり、夏に、秋に、冬に、そしてまた春へと変わっていくんだよ。一年は十二か月。十二を四で割ると?」 「三です!」 「よくできました。そう、一つの季節は三か月しかない。だからその三か月の間で、その季節を楽しむんだ。夏は暑いけど、水が美味しい。氷も美味しい。アイスも美味しい。そして日本では夏限定でそうめんと言う食べ物があるんだが、これも美味しいんだ。良いことだらけだけど、その分、暑い。メリットデメリット半分半分だな」  ソウメン、か。お母さんが作ってくれたら、それはそれで美味しさがアップだ。今日の晩御飯としてお願いしてみよう。 「そして、夏には夏しかいない生き物もいる。セミは知っているだろう?」  首を縦に振って返事をする。 「セミはどの季節にいると思う?」 「……夏、ですか?」 「うん、そう。セミは夏にしか姿を現さない。夏の間、一か月しか寿命が持たないんだ。だけどその分、地中で栄養を蓄える。確か……三年から十年以上も地中で幼虫として過ごすんだったかな……」     
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