第二章 少年期【中】

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 十年以上も土の中で過ごすのか……。それは凄いと思うけど、地中で何をして過ごしているんだろうか。気になる。 「十年以上も地中で過ごすセミは、昆虫の中でもトップクラスの寿命の持ち主だ。だが、本当に活動出来るのはさっき言った通り、一か月程度。もしかしたらそれより短いかもしれない。それでもあいつらは子孫を残す為に、必死に鳴き続けているんだ。今聞こえるのも全員、雌のセミの気を引く為のものなんだよ」  あの鳴き声はそういう意味があったのか。勉強になる。 「あれ? でも、地中で十年も過ごすんだったら、次に鳴くのは十年後ですよね。なのに、なんで毎年のようにセミは鳴くんですか?」 「世代と言うのがある。一つの世代が終われば、二つ目の世代に移る。二つ目が終われば三つ目。三つ目が終われば四つ目の繰り返しだ。何も一度に全員が地上に出てくるわけじゃない。時期がずれた者が次の時期に鳴くんだ。さて、夏の風物詩とも言えるセミのお話はお終い。仕事に戻るよ」  もう終わりなのか。もう少し詳しく聞きたかったけど、お母さんが仕事を優先するのならそれに従うまでだ。文句は言わない。     
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