第二章 少年期【中】

7/20

234人が本棚に入れています
本棚に追加
/225ページ
 黙々と駒を動かす。段々と駒がどんな動きをするのかわかってきた。 「では、このポーンは貰い」 「じゃあ、僕はそのナイトをクイーンで取ります」 「やるね。でもいいのかな? キングを置き去りにして」  今の駒の位置ではキングはまだ安全圏内にいる。あと数手あっても無事だ。逃げ切れる。その前に重要な駒を取って、ポーンを別の駒に変えないと……  激しい攻防戦が繰り広げられるが、僕の駒がドンドン取られていく。  そして、僕の駒はキングとクイーン、ビショップ一つしかなくなってしまった。 「キング、クイーン、ビショップ。カードなら最高のカードなんだけど、チェスでは厳しいね。さて……愛しの息子はここからどう出るのかな?」  ニヤニヤと余裕の顔をしている。  そう、僕は敗北する。これは避けられない運命だ。初めてした、と言うだけで負けを認めるのは納得できない。初めてでも勝っていいはずだ。それを僕が証明してみせる。  クイーンを動かして、お母さんのナイトを取る。 「そう来たか。じゃあ、私も……」  お母さんは自分のクイーンを動かして僕のキングの横に置いた。 「チェック。出来れば華麗にチェックメイトで終わらしたいところだ。無駄な抵抗は止めたまえ。君は偉大なる母の前にいるんだぞ?」     
/225ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加