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黙々と駒を動かす。段々と駒がどんな動きをするのかわかってきた。
「では、このポーンは貰い」
「じゃあ、僕はそのナイトをクイーンで取ります」
「やるね。でもいいのかな? キングを置き去りにして」
今の駒の位置ではキングはまだ安全圏内にいる。あと数手あっても無事だ。逃げ切れる。その前に重要な駒を取って、ポーンを別の駒に変えないと……
激しい攻防戦が繰り広げられるが、僕の駒がドンドン取られていく。
そして、僕の駒はキングとクイーン、ビショップ一つしかなくなってしまった。
「キング、クイーン、ビショップ。カードなら最高のカードなんだけど、チェスでは厳しいね。さて……愛しの息子はここからどう出るのかな?」
ニヤニヤと余裕の顔をしている。
そう、僕は敗北する。これは避けられない運命だ。初めてした、と言うだけで負けを認めるのは納得できない。初めてでも勝っていいはずだ。それを僕が証明してみせる。
クイーンを動かして、お母さんのナイトを取る。
「そう来たか。じゃあ、私も……」
お母さんは自分のクイーンを動かして僕のキングの横に置いた。
「チェック。出来れば華麗にチェックメイトで終わらしたいところだ。無駄な抵抗は止めたまえ。君は偉大なる母の前にいるんだぞ?」
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