第二章 少年期【中】

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「逃げ続ければ勝てないけど負けません。引き分け狙いです」 「そう来たか。でも、引き分けは難しいぞ。引き分けはステールメイトと呼ばれる高等な技だ。果たして初心者の君が出来るかな?」  正直な話、このゲームの引き分け方なんて知らない。だけど、キングが動けない状態にすれば引き分けになるんじゃないかと思っている。  キングを動かし、引き分けに出来る状況を作る。だけど…… 「チェックメイト」  僕の願いはあっさり打ち砕かれてしまった。 「私の勝ち。でも、初めてにしてはいい腕だ。世界大会でも目指しても良いんじゃないかな?」 「もう一回お願いします!」 「良いとも。何回でもかかって来なさい。私に勝てたら好きな望みを好きなだけ叶えてあげるよ」  やる気が出てきた。  大丈夫、駒の動かし方はある程度覚えた。後は戦力を練って、勝つだけだ。  そうして意気込んで勝負を挑んだが、僕は全敗してしまった。  勝てない。全く勝てない。  お母さんはあの手この手で僕からほとんどの駒を奪うと必ずチェックメイトで勝負を決めてくる。  一方的な蹂躙。これはもはやイジメと言ってもいいぐらいの勝負だ。  それでもいつか勝てる、そう信じて次の勝負を待とう。出来れば明日、すぐにでも勝負を挑みたい。     
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