第二章 少年期【中】

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 アベルさんとお母さんと一緒に、お母さんが作った料理を食べる。  とても賑やかになった。とても楽しい食事の時間だった。  もし可能なら、もし出来るのなら。  僕はアベルさんとも一緒に暮らしてみたい。お母さんと僕と、三人で。  だけど、それは叶わない願いだと言うことはわかっている。アベルさんにもアベルさんの生活がある、仕事がある。それを邪魔してはいけない。  その願いを心の中に押し込めて、封印する。間違っても言わないように、固く。 「アベル。畑の野菜がもう少しで収穫できそうなんだ。買い取ってくれ」 「構わねえよ。腐らせるより、買い取ってそれを高値で売りつけた方が野菜たちの為にも良い。俺の懐事情的にもな。収穫出来たら言ってくれ。うるさいジジイ共もしばらくは黙るだろうしな」  ジジイ……? アベルさんにはおじいちゃんがいるのかな。歳を考えればおじいちゃんはいないはずだけど。  それに『共』とも言った。複数おじいさんがいると言うことだ。アベルさんはどういうところで働いているんだろう。  しばらくお母さんとアベルさんの会話を聞いていた。僕には理解出来ない話だったけど、二人とも楽しそうだった。それが僕にとっても楽しい。 「ノア」  お母さんが僕の名前を呼んだ。手を伸ばし、僕の口元に付いていた何かをつかみ取り、それを自分の口に持って行った。 「ノアはまだまだ子供だね。食べかすが口に付いているなんて……その歳になっても」 「どうせ僕は子供ですよ」 「おや、怒らせてしまったみたいだ。これでは怖くて怖くてしょうがない。安心する為に、一緒に寝てあげよう」 「俺も寝ていいか?」 「お前は来るな。帰れ。もしベッドに入ってきたら殺す」  一瞬にしてお母さんの顔つきが変わったのでアベルさんが小さな悲鳴を上げた。  と言うか、僕は別にお母さんと一緒に寝たくないんだけど。子供と言ってももう一人で寝られる歳なんだから。
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