第三章 少年期【下】

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第三章 少年期【下】

 楽しい時間と言うのはあっという間に過ぎていく。  アベルさんが帰り、いつも通りに寝て、いつも通りに朝を迎え、夜になる。  その繰り返しをいつまで続けただろうか。  僕の体は日が過ぎると共に成長していき、大分背が伸びた。それでもまだお母さんの身長には届かない。まだまだ時間はかかりそうだ。 「ノアも大きくなったね~。今年で十五歳だっけ?」 「そうですね。今年と言うより、もう十五歳ですけど」 「……あの~……」  お母さんが申し訳なさそうな声を出して何か言いたそうな顔をしている。 「私ってノアの誕生日、聞いていたっけ?」  今にも口から何かが出てきそうな顔をして聞いて来たことは、とても些細なことだった。 「いえ、言っていませんよ」 「ごめん! 本当にごめん!」  手を合わせて謝罪をしてきた。何を謝る必要があるのだろうか、さっぱりわからない。 「私ってば、ノアの誕生日のお祝いするのをすっかり忘れてた! 三年も一緒に暮らしていたのに!」 「……あー」  誕生日のお祝い、か。何だか懐かしいな。  昔……売られる前は毎年両親が僕の誕生日にケーキを買って来てくれてプレゼントをくれたっけ……。今ではもうはっきりと思い出せないけど、あの時の二人の顔はとても嬉しそうな顔だったと思う。
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