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第四章 青年期【上】
日が変わり、曜日が変わり、月が変わり、年が過ぎ……
僕は十八歳になった。成長も止まり、母さんの身長を超えた。筋肉も付いてきて、ある程度の力仕事も出来るようになった。
「ノアー。これ運んでくれない?」
アベルさんに売る用の野菜を詰めた段ボールを軽々と持ち上げ、決まった場所に持って行く。
「いやー、ノアが大きくなったのは嬉しいね。安心して重い物も持たせられるし、何より料理も上手くなった。言うことなしだ。どこにお婿さんに出しても文句ないよ」
「その前に相手がいませんよ、母さん」
「いつの間にか”お母さん”から”母さん”に変わっているし……あの小さくて可愛かったノアはもういないんだね……嬉しいのやら悲しいのやら……」
「そこは素直に喜んでくださいよ」
六年間で鍛えられたツッコミを入れる。すると母さんは喜ぶ。ある意味、変態だ。
段ボールを運び終え、体を思いっきり伸ばし、風の冷たい心地よさを全身で感じる。もうすぐ冬だ。
この感じももう六年も経ったのか……月日が流れるのは早いものだ。
母さんは老化を感じさせないほどに全く変わっていない。逆にアベルさんはひげが生えてきた。もう立派なおじさんになっていた。
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