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第二章 少年期【中】
お母さんに貰った靴を履いてから一週間が経った。その一週間の間、僕はその靴を大切にしながら履き歩いていた。
「ノーア。汚れそうな場所を避けて通らないの。それじゃあ仕事にならないじゃない」
いつも通りに畑仕事をしているけど、靴を汚したくないので、土から離れた場所で作業している。
「だって、お母さんに貰った靴が汚れてしまうんですよ。せっかく貰った大切な靴を汚したくありません」
「いや、そうかもしれないけど……まあ、いいわ。喜んでくれるのならさ」
先に折れたのはお母さんだった。僕の初めての勝利。だけど、こんな勝ち方で良いのかな。誰かに聞けるはずもないので、僕の心の中にしまっておこう。
「いや~、それにしても暑いね~。だから夏は嫌いなんだ」
「夏って……?」
「そう言えば四季について教えてなかったね」
シキ、とは一体何なんだろう。また教えてくれるとわかったので、すぐにお母さんの元に駆け寄る。
「ノアは犬かな?」
「言い方によってはお母さんのペットです」
「その言い方は止めようね? 誰にも話しちゃダメだし、忘れること。良いね?」
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