奇妙な住人

2/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
1年前、一人暮らしを始めようとして家を探していた僕は駅から徒歩15分の不動産屋に行った。 家なんてすぐ見つかるだろうと高を括っていたので一人暮らしを始めると決めた日の3日前まで何もしていなかった。 ところが、家賃は5万円台で日当たりがよくてお風呂とトイレは別で…などと色々と条件をつけたのでどの不動産屋に行っても目当ての物件は見つからなかった。 そんな中、近くの不動産屋ではなく6つ隣の駅の近くまで足を伸ばしていた。 どうせここでも見つからないんだろうなあ。とネガティブなことを思いつついつも通り条件を述べる。ここで見つからなかったら妥協できるところから順に妥協していってなんとしてでも物件にありつこうと思っていた。 『お客さん、ちょっとこっちからの条件を飲んでいただけるならありますよ、条件に合う物件。』 メガネをかけた30代後半くらいのスーツの男性が対応してくれて、口を開いてそう言った。 『え!!まじですか!?』 …その時は勢いで決めてしまった。 だって提示された条件は"同居したい人がいたら断らずに同居すること"だったからだ。 今どきそんな人いないだろうと思って大して気にせずに承諾して一人暮らしを始めた。それから一年経った3日前。 『あ、もしもし。高杉さんの携帯でよろしいでしょうか?』 そんな口調で電話をかけて来たのは一年前この同居物件を提示してくれた男だった。 男は『3日後そちらに同居希望の方が伺いますのでよろしく。』と一方的に用件を告げて電話を切った。 その電話から3日経った今日。 テレビやSNSで話題になっている物騒な事件のニュースを見ながら朝ごはんを食べているとチャイムが鳴った。 玄関のドアを開けて心底驚いた。 (え…女性…??) 『こんにちは。今日からここで一緒に住まわせてもらいます。佐藤香穂といいます。よろしくお願いします。』 丁寧な口調で挨拶をし、勢いよく頭を下げた彼女を呆然と見つめたまま一応聞いた。 『え、同居って君?冗談でしょ?』 『いえ、私で間違いないですよ。私冗談嫌いですもん。』 ここは冗談でも冗談だと言って欲しかった。 明らかにだいぶ自分より年下の女の子と一緒に住むのか…? そんなことを考えている間に彼女は上がり込み空いている一室に荷物を置きにいった。 その日から彼女との同居生活は始まった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!