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「若、此方に」
若者は大男の横を黙ってすり抜けると烏丸が用意した席にふわりと座った。
「なんだ、たった二人か」
皆の中から声が聞こえる。
「他の者は控えさせている。
この狭い部屋では入りきれぬでな」
大男が鋭い眼差しで皆を見周す。
「琢磨、脅すでない」
青年はその場で立ち上がると席に座ったままの一同を眺めるように見た。
「月華王葛葉です。
この戦、この月華王が引き受けましょう。
見るところどなたも戦には不向きなようだ」
そう言うと烏丸に向かう。
「叔父様、鬼の兵は大食漢ばかり、直に島からの荷が着きます。
宿舎の用意をお願いします。
それとこれは月華王我聶丸よりの書状です」
「おお!我聶丸様の」
「大祖父は今時渡りを封印されています。
けれどこの戦の状況次第ではその封印も解かれるおつもりのようだ」
若者の話に皆がざわつく。
(月華王我聶丸・・
あの伝説の鬼神が来るのか?)
「勿論、この葛葉で事足りるのであればわざわざ大祖父に足を運んで貰わずとも良いのですが・・」
若者がもう一度皆を見周す。
その顔は穏やかに見える。
しかしその目は大男のそれさえも足元にも及ばぬ位鋭い。
その目に睨まれた者は恐ろしさに身体中から冷や汗が滴る。
「葛葉・・
いや、月華王様、直に宿舎の用意が整います」
烏丸はそれだけ言うと自分の席に腰を降ろした。
「では会議を続けましょう。
先ずはこの戦いに参戦されぬ方はたった今席を立たれよ。
参戦されぬ迄も、物資や金品での支援を申し出られる方は部屋を出た右に控える者にそう告げられよ。
その旨をこの戦いの戦記に残し名誉を称えましょう」
烏丸の一言で半数以上の者が部屋を後にした。
琢磨は残った者達を見る。
「もう迷われる方はおらぬと考えて宜しいか?」
そう聞いた。
烏丸が残りの数を確かめる。 席に座っているのは自分達を入れて僅か12人・・
ため息を吐きながら月華王を見た。
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