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「葛葉どの・・」
烏丸はその言葉に強い意志を感じる。
今はもうこの日の本では失われつつある魂とでも言うべきその意志を持つ若者が我が甥である事を誇りに思い見つめる。
「若、会議を続けましょう」
大男の声でふたたび作戦会議が始まる。
先ずは厄災神が何処で復活を果たすかの情報が集められる事になった。
その夜、闇に乗じて千五百の鬼達が烏丸が用意した宿舎に入った。
「鬼族」と一口に言うが島の鬼族は皆何かしらの魔物やあやかしの血が混じる者達だ。
見た目には鬼とは解らないほどの華奢な者やその背中に羽を持つ者もいた。
しかし皆顔見知りの者達だ。
直ぐに宿舎は修学旅行のように楽しげに賑やかになった。
「玖珠里(クズリ)手に入れてきたか?」
大柄でまるでラグビー選手のような知覧(チラン)がほそ身な若者に声をかけた。
「ああ、取りあえず30個・・
後は入荷待ちだ」
そう言って玖珠里がバッグから取り出したのは真新しいブルーツースの箱だった。
「おっ、良いじゃん!それ!俺のは?」
「河陰(カイン)のタブレットはこっちだ。
でもここ電波情態最悪だよ、
携帯も繋がらなくて彼女に連絡も出来ない。
きっと今頃はかんかんに怒ってるよ」
玖珠里は顔をしかめながら何人かの仲間達にブルーツースを渡した。
「お前の彼女白狐族だろ?
あの種族は焼きもちが強いからなぁ。
俺も去年の合コンで知り合った隣の島の娘と何度かデートしたけど焼きもちが酷くてさ、後で聞いたら白狐族の娘だった」
「元来鬼族は浮気者が多いからな」
「俺は違う。
俺の中にも白狐の血は流れてるんだ。
それに俺の方が真理亜に 惚れてる。
付き合う時だって俺から申し込んだ」
玖珠里は皆にからかわれながらも島に残した恋人を思った。
「彼女がいるやつは良いじゃん。
俺なんか振られてばっかりでいまだに一人だ。
まあ、その方がこの戦では強みになるがな」
側で話を聞いていた仁鵝(ジンガ)が口を挟む。
その一言で賑かだった宿舎がシーンと静まり返った。
「やめろよ仁鵝。
皆実戦は怖いんだ。
この戦は今までとは違う。
千年前だってやっと勝てたと聞いた事がある・・」
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