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「何を気弱な!
俺達は鬼だぞ!
鬼とは鬼神の末裔なんだ。
他のどの種より身体も強く力もある。
それに島の鬼族には頭能だって有るんだ。
千年前の伝など踏まない」
玖珠里の声にその場の鬼達が声を挙げる。
直ぐに賑かさが戻って来た。
「単純なのも俺達鬼族の良いところだな」
知覧が笑いながら玖珠里を見る。
「ああ、本当だ」
玖珠里も笑いながら知覧に同意しながら、今渡したタブレットの使い方を教えだした。
「おい、お前達、いくら結界の中とは言え千五百もの鬼が集まっているのだ。
少しは静かにしないか。
千年前とは違って鞍馬も人が多く住んでる。
こんな夜中に騒げば人間達に気付かれる」
会議が終わりを宿舎に入った葛葉が皆に声をかけた。
「若、ここで眠られるのですか?」
玖珠里が慌てて荷物を隠す。
「僕が居ては都合が悪そうだな?」
「いえ、そんな」
慌てる玖珠里を見ながら葛葉と琢磨が皆を集めた。
「もう夜も深い。
明日からは何人かに分けて人の街に出てもらう。
鬼とは分からなそうな者を選ぶ積もりだが、誰が選ばれても良いように早く寝ておけ」
琢磨の号令に皆は一斉に寝床に入る。
直に宿舎の明かりが消される。
会議に残った者達が宿舎とした奥の院の坊から烏丸がそれを見ていた。
「これで戦いの火蓋が切られるのだな・・」
そう呟く。
すぐそばで同じく明かりの消えた宿舎を見ていた者達も同じ思いに心が震えていた。
翌日から二人一組で、厄災神のてががりを聞き込むために京都の街に出ることになった鬼達は、それこそ修学旅行の高校生並みに嬉しそうに宿舎を後にした。
どう見ても鬼族としか見えぬ者は、同じあやかしや魔物の一族からの聞き込みを担当する。
それでも初めての京都に皆は喜んで出掛けて行く。
後には留守を預かる琢磨と、データを分析する玖珠里が残った。
葛葉はボディーカードを申し出た知覧と河原町に足を運ぶ。
「若、どんな者に聞けば分かるんですかね?」
「先ずは何でもいい、今までとは変わった場所や噂話なんかを聞くんだ。
今日集めたデータを分析して明日からの目安にする」
葛葉の指示で知覧が通りがかった店の主人等に話し掛ける。
ひとつ、二つ店の品物を買い求めながら話を聞いた。
葛葉も同じように噂を集める。
他の者達も同じように聞き込んで廻った。
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