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皆が戻ると、玖珠里が今日集めたデータを基に翌日の聞き込みスポットを割り出す。
噂から割り出した場所は奈良と大津。
不思議な人や現象はもう少しデータが必要としてもう一日河原町や京都駅前等を選んだ。
「それなら僕は大津組に入ろう」
夕食の席で葛葉がそう言った。
人懐こい知覧は河原町組に残り、替わって仁鵝が葛葉のボディカードを買って出た。
奈良組には若い鬼達の志願が集中した為に、今日は宿舎に残った琢磨が引率を任された。
「琢磨、修学旅行の引率をする校長みたいだな」
葛葉がそう言って琢磨をからかう。
いつも葛葉と行動を共にしている琢磨を怖いと思っていた若い鬼達からその一言で笑いが起こる。
その場がいつになく柔らかくなる。
(葛葉様はこんなところも我聶丸様によく似ておられる)
琢磨はそう思いながらまだ若い月華王を嬉しく眺める。
そう言えば、俺が我聶丸様に仕えたのはまだ12歳の時だった・・
琢磨は元々島で生まれた者ではなかった。
今は鬼族として生きては要るが、元は人間・・
戦で国を追われ、親兄妹と小さな船で新天地を目指し海に逃れた。
だが嵐に流され、島に着いた時には幼い妹と二人だけが生き残った。
生き残ったとは言っても、飲まず食わずで海上を流されたのだ。
親は子供に僅かな食物を与えそれでも子供達の体力が落ちると、自分の腕を噛みきりその血を口へと流し飲ませた。
お陰で島に流れ着いた時、兄妹は何とか息があったが両親は息が絶えていたと後から聞かされた。
我聶丸はそんな二人に自分の血を与えた。
鬼の血で二人は鬼と化し生き永らえる事が出来た。
それを恩と感じた琢磨は村に残り我聶丸に仕え、妹の可憐(かれん)は隣の島を預かる鬼族の長、篝火(かがり)の養女になった。
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