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その妹は、我聶丸の息子光我(こうが)が生まれた頃、長の一人息子、九鬼の妻となって今は4人の子供を育てる母となっていた。
可憐は夫が此方の島に用があると、付いてきては琢磨の身の周りの世話をやいた。
「帰ったら忙しいんだろ?
俺の事は良いから・・」
そう言っても、笑いながら手を休めない。
「兄さんにお嫁が来るまでは世話をやかせて」
そう言ってから俺の目を覗く。
「本当にいないの?
好きな人・・」
俺が戸惑うと、また笑いながら手を動かした。
(俺は妻は持たぬのだろうな。
若の息子迄はお仕えしたい。
それが今の俺の望だ・・)
琢磨は改めて楠葉の横顔を見る。
あやかしや人の血を持ちながら、鬼の頭領として生きなければならない。
その責任をこの細い肩に担いながら皆の中心で笑っている。
正直、葛葉が月華王の座に就く時はなんと頼りないと思ったものだったが・・
「琢磨、どうした?」
じっと自分の顔を見る琢磨に葛葉が不思議そうに聞いた。
「いえ、何も・・
ただ、ご立派になられたと」
「いや、立派など。
まだまだお前に助けて貰わなければ・・」
葛葉がそう言って笑う。
つられるように琢磨の顔にも笑みが浮かんだ。
「琢磨、後で烏丸様のところに今迄の報告を頼む。
それと、島に必要な物の追加を頼んでくれ。
これだけの大食漢を賄うには最初の物資だけじゃ足りそうもない」
「わかりました。
直ぐに手配をいたします」
「あっ、それから・・
皆に少しこずかいを渡してはくれぬか?
街に出れば島では食べられぬ物や珍しい物がたくさん目に付く。
島から持ってきた金ではこちらでは換金も難しい。
日本円を持ってきた者とて金額はしれていよう」
「はい。
そちらも手配いたします」
葛葉にそう返事をして周りの者達を見る。
(千五百・・)
少しと言っても人数が多い。
島に頼まなければ手持ちでは足りない。
琢磨はため息を吐きながら烏丸の部屋を訪ねた。
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