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「ありがとう」
家の前まで戻ってくると、トキの車がなかった。
不意に涙腺が緩みそうになる。
泣くべきだろうか。
信じるべきだろうか。
いつの間にか、太陽は頭上から私を照らしている。
そのまま立ち尽くしていると、遠くから、聞きなれたエンジン音が近付いてくるのが分かった。
「麻美・・・・・・良かった」
心の底から安堵している彼を見て、また目頭が熱くなってきた。
そのまま視線を斜め下に移し、前髪で瞳を隠した。
トキは、助手席のドアを開けたかと思うと、私の手を優しく握った。
ー乗ってー
言葉にはしないけど、そう言っている様な気がした。
顔を上げると、トキの優しい笑顔が視線の中に飛び込んでくる。
私はもう一度俯くと、無言のままで、助手席に腰掛けた。
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