「お礼、させてあげよっか」

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 お礼を言うでもなく、ただ私の顔を見ているだけのその人に、軽く会釈してから、私は品出しを再開した。 「あ、あの」  突然、仁王立ちしたまま、その人は私に声を掛けてきた。  品出しの手を止めて、しゃがんだままその人を見上げると、その顔は真っ赤になっている。 「あ、ありがとう。お礼し、たいので、すが」 「いえ、店員として当たり前の事をしたまでですから」  私はむげもなく答えてから、足元の商品に手を伸ばした。 「でも、それでは、僕の、気が・・・・・・」  そう言われて、私はその場で立ち上がり、両手を腰に当てた。 「ナンパとか、そういうの、困るんですけど」  立ち上がってみると、その人は意外と小さく見えた。  身長は同じ位だから、きっとおどおどしているせいだろう。 「そ、そういうつもりでは・・・・・・」  これ以上付き合ってもしかたないと、私は品出しに戻った。
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