「お礼、させてあげよっか」

4/4

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 私は、店員さんを一度制止して、その人のところに歩み寄った。 「おーじーさん」  体を斜めにして、声を掛けてみた。 「え、うわっ!?」  その人は、驚いた拍子に、手に持っていたフォークを落とした。 「さっきはどーも。おじさん、私にお礼したいって言ってたよね」  問いかけても、目を見開いて微動だにしない。 「お礼、させてあげよっか。ここ、いい?」  返事を待たずに、私は向かいの席に腰掛けた。  その時になって、やっと動き出したその人は、慌ててフォークを拾うと、やっと口を開いた。 「バイト、終わっ、たの?」  さっきからずっと動揺しているその人を見て、私は可笑しくなった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加