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ディラインは一度であの炎を見せたのだ。このまま術が使えない日が続いたら、コルエラは自分をどう思うだろう。
レイリは『記憶を複製するだけにして、術の訓練は止めよう』とバートに言われたが、頼み込んで毎日訓練をさせてもらった。
思い悩むことで術を使うための思考力がついたのか、しばらくしてやっと術が使えるようになった。
悩んだ分だけ術の威力が増し、その分、心がやつれていく。
思い通りにいかない分だけコルエラに対する申し訳なさが募った。
それでもレイリは皆の前では気丈に振る舞った。ただ唯一、同じ境遇のディラインの前では、我慢できずに弱音をはいた。実技訓練の休憩時間、二人きりになると決まってぽつりとこぼす。
「いいなあディラインは。強い術が使えて」
ディラインも精神的にかなり参っていたが、研究室では平静を装っていた。
しかし今ではレイリの前でもそうする気力がなくなっていた。ディラインは実技の訓練をするようになってから、体調が最悪であった。本当は他の何にも気を遣いたくない。
「おまえはそれでいいと言われてるんだろう? いいじゃないか」
投げ遣りに応える。レイリは最近ディラインが冷たいような気がして寂しかった。それでもレイリにとって、今の自分をさらせるのはディラインだけだった。
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