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「まあ簡単に言うと、記憶を他の人間の脳に複製するんだな。素材は『術法』だ。これであの分厚い本を読む時間を短縮できる。色々と可能性のある子供と、複製の素材が頭に入っていない成人にそれぞれ複製を施すことになった。今、うちの官で二次成長期前の子供を育てているのがお前しかいなくてな」  レイリはコルエラの弟子であると共に、養子のようなものであった。  人数の少ないこの国の術士は、二十五歳になると弟子を取る事を義務付けられている。  実の子供がいればその子を術士として育てるが、コルエラにはあいにく子供がおらず、孤児院から適性のある子供を探して弟子に取った。  ほとんどの術士は引き取った子供を養子にしたが、コルエラは敢えてそうはしなかった。自分自身術士の養子となって、何度後悔したか知れなかったからだ。  レイリは進んでここに来たが、できるだけ負担を軽くしてやりたかった。自分のことを自分で考えることができるようになったとき、何にも捕らわれず自由に自分の居場所を見つけて欲しかった。  その弟子に、人体実験を手伝えと言う。コルエラは漠然と危険性を感じたが、今の説明からは断固拒否する要素も感じられず、かと言って利点も今一つ納得することができずに、何から問い質せばいいものかと考えていた。  副長はそれを見越していたらしい。そのまま言葉を続けた。     
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