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それは悲しいでは足りない、恐怖だった。  コルエラが床に就こうとレイリの部屋の前を通ると、中から酷く咳き込む音が聞こえた。扉を叩いたが返事がない。  声をかけ扉を開けると、レイリは窓を開けて地面を覗くようにしていた。肩で息をして、震えている。  驚いてコルエラはレイリの元に駆け寄った。 「どうした? 吐いたのか?」  レイリの背中をゆっくりとさする。しばらくレイリは荒い呼吸をしていたが、コルエラの顔を見ると小さくうめいて涙を溢れさせた。  そして辛そうに顔を歪め、顔を背ける。震えが一層大きくなった。 「どこか、痛いのか?」  動揺を抑えてコルエラは優しく尋ねる。返事はなかった。  生温い風が入ってきてコルエラは一瞬、開いた窓から空を見上げた。  深夜の静かな空気、月明かりだけに照らされた暗い室内。  コルエラはそれに憶えがあった。子供の頃、父を、自分を恨んで気が狂いそうだったあの頃、自分も窓にもたれて何度も全てを吐き出して苦しんでいた。しかし、あれは自分が十を過ぎてからの話だ。     
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