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16
ディラインは騎士官の治安仕になりたかった。子供の頃から父に鍛えられた剣術を活かせると思ったからだ。
しかし、実際配属されたのは王宮仕だった。王宮仕も重要な仕事であるが、治安仕よりも力を活かす機会が極端に少ない。
配属されて一年たって、術法の複製を依頼された。ディラインは快く引き受けた。術法を修得すればそれを活かす場所が必要だ。治安仕への転属を申し出れば難なく受理されるだろうと考えた。
しかし。それも叶わなかった。体に障るため術の使用を止められた。魔法を使いたいなら他国に留学するとよいと言われたが、今更騎士が魔法の勉強の為に言葉も知らない他国に渡るなど馬鹿らしいと思った。
無駄にした時間はほんのひとつき。通常なら『いい経験だった』で済まされる話だったが、ディラインはその時、体力的にも精神的にも限りなく不安定だった。全ての思考が悪い方へと偏っていた。
「俺はお前をもう、見たくないんだ。嫌なことばかり思い出す」
ディラインは無表情でそう告げる。レイリは悲愴な思いでそれを聞いた。しかしやはり、何故自分を見たくないのか解らなかった。
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