0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
彼女との出会いは雨の日だった。
ありがちかも知れない話だが彼女は雨の中捨てられていたのだ。
段ボールに入れられた捨て猫。
なんとも、形式的な話だと思う。
小さく生まれて間もない子だと思った。
毛並みは元は綺麗で白いふわふわな毛をしていただろうけど今は薄汚れていた。
それよりもとても惹かれたのは、その目だった。
捨てられたと言うのに絶望を知らないまだ、生きるのを諦めていない目。
目が合った。
力強い目だった。
すると彼女は一言「にゃあ」と鳴いた。
やはり弱っているのか、と思わざるえない声。
だけど、目だけはしっかり生きぬこうとする目。
「……一緒に、来るか?」
思わず問いかけてしまった。
猫に問いかけてもなぁ……と思ったが、しかし、彼女は僕の目をじぃっと見て、そして再び「にゃあ」と鳴いた。
決まりだ。
それから僕は彼女を動物病院に連れていき適切な処置をしてもらった。
やはり、彼女の生きる意思は強かった。
数日経つと彼女はすぐに元気を取り戻し、食欲もあり、子猫らしくじゃれついて来るまでになった。
彼女の生への意思の強さは自身を生かす運を呼び込んだようだ。
ならば、その運に呼び込まれた僕は彼女を大切にしなければならない。
出来るならば、彼女の最後の時まで。
今となっては彼女は大切な家族なのだから。
最初のコメントを投稿しよう!