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時間の止まった部屋で
なにもできなくなった────。そんな状態を、あなたは想像したことがあるだろうか?
きっちりと遮光のためのカーテンが閉められた部屋の中。家具はベッドと机と小ぶりな本棚しかない。ただでさえ狭い元自室で、僕の動ける範囲はその隅っこの畳半畳ぶんだ。
手の届く範囲には床と壁だけ。前はお気に入りの場所だったが、そこに釘付けにされることが分かっていたらもうちょっとマシな所を定位置にしていた。
そう────、地縛霊になるならもっとマシな所に地縛されたかった。
因みに成仏の仕方なんてのは全く分からない。死んだ自覚があるだけだ。本能で感じろとかいうやつだった場合、僕は理屈派なのだがどうすればいいのだろう。この世に未練がある? それも考えたが、到底未練とは言えないものしか思いつかなかった。
そうして部屋の明度が僅かに変わるのを繰り返し、日めくりカレンダーを捲りに来る母の泣き出しそうな顔を見られなくなって。僕は抱えた膝に顔を埋め、思考を止めた。
たぶんたくさんの朝が来て、夜が来て、時計の針は何度も出会って、一月分の日めくりカレンダーがもう十何個目かになった頃────
ぽん、と。
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