綺麗になんてなれない

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 そんなことよりも、ただひたすら気がかりだった。彼の心も、彼が周囲と築く関係も。  仲をこじらせて修羅場になったことは一度もないけれど、根っこが真面目なせいでイマイチ遊び人になり切れない義之の行動に、私はいつもハラハラしている。  ハラハラするだけで、セフレの一人に過ぎない私には、見守ることしかできないのがもどかしい。  義之の心は深く傷ついていて、内に籠って、暗闇に一人きりでうずくまっている。差し伸べられる手すら拒んで、自分を傷つけ続けている。  彼を癒すすべが見つからなくて私は、ずっと暗闇の中を彷徨って途方に暮れている。  一筋の明かりさえあれば、暗闇の中にきっと互いの存在を見つけられるはずなのに、深い闇はただひたすらに孤独だった。  一日の最後の講義を終えた私は、部室に寄らずに真っ直ぐ帰宅することを選んだ。  サークル仲間とひたすらおしゃべりしたり、コンパに行ったりするのが、億劫だったのだ。みきちゃんの前で義之といつものやりとりをするのは、やっぱり気まずい。  実家生の私が電車を乗り継いで帰る先はもちろん、義之や雅義くん、巴ちゃんと子供時代を過ごした街だ。小さい頃から記憶の中にある、けれども少しずつ形を変えゆく街。     
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