綺麗になんてなれない

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 誰も悪くないのだから。義之の告白に応じながら、雅義くんへの想いを捨てられなかった巴ちゃんも、それを受け入れた雅義くんも。  自分の素直な心に従ったなら、それがあるべき姿だったんだ。そうして見つけた幸せを大事にしていてほしい。  だけど、たった一人、ままならない現実を酷い形で突きつけられた義之の悲しみに、私だけは寄り添ってあげなければ。彼を崖から突き落とす最後のひと押しを加えてしまった責任が、私にはある。  そのあと雅義くんとなにを話したのかは、よく覚えていない。当たり障りなく、無難な対応で会話を終えられたのだろう。それが分かれば充分だった。  雅義くんと別れて一人になった私は、一つ大きな深呼吸をして、動きの鈍った脳に活を入れた。  結婚の話が、弟の義之に伝わっていないはずがない。今日挨拶に来ていることももちろん知っているだろう。  私は自分のすべきことを考えて、心を決めた。  家に向かっていた足の方向をくるりと変えて、お母さんにメールを打つ。 『友だちの家に泊まるので夕食はいりません』  嘘を付いて外泊したことなんて今まで一度もなかったけれど、躊躇いはなかった。  しばらくして私の携帯を震わせたのは、お母さんからの返信ではなく、彼からの呼び出しだった。 「……なにその袋」     
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