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圧倒された私は何も言えないまま腕を掴まれ、部屋の中に引きずり込まれた。
途中で落としてしまった買い物袋が再び音を立てるも、義之は一瞥もくれない。私の腕をぐいぐい引っぱって奥に連れていき、投げ捨てるようにしてベッドに押し倒した。
「あの、義之。待……――っ」
「若葉はただセックスだけしてればいい」
つららのように冷たく尖った言葉が、油断していた私の胸をひと突きにした。致命傷だ。
ぐっさりと貫かれた傷口から血液が流れ出して、体温を奪われて、私の視界は真っ暗になる。
義之が感情もあらわな荒っぽい手際で私から衣服を剥ぎ取っていくのに、私は手足をピクリとも動かすことができなかった。
生地の薄い夏物のブラウスのボタンが外されると、透け防止のキャミソールが大胆にめくりあげられた。
それらは確かに私の目に映っているのに、意識の上を素通りしていく。
されるがままの私の胸を下着ごと掴んで形を歪ませる義之は下ばかりを見ていて、どんな顔をしているのか知ることはできない。彼のさらさらな髪をぼんやりと眺めながら、私のしんと静まり返った頭の中に一つの疑問がふっと浮かんだ。
私、なにをしにここに来たんだっけ。
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