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この涙は、悲しさとか、寂しさとか、そんな単純なものから生まれたんじゃない。悔しさとか、恨みとか、いろんなものがごちゃまぜになって溶け込んでいる。それなのに、涙はいつでもこんなに透き通った雫になるんだ。無力でズルくて汚い私から、溢れていく綺麗な雫たち。
私は歯を食いしばった。あらゆるものを、自分の胸一つに呑み込んでしまいたくなった。
無理やり暴かれている体じゃなく、触れさせてもらえない心がひどく痛む。義之に触れたいとどんなに望んでも、彼の元に私の手は届かない。
だったらいっそ、口を閉ざして、語り掛けることも手を伸ばすこともやめて、私の全てを涙に溶かしてしまいたい。
そうしたら――私も、綺麗になれるでしょう?
義之の手つきはこの上なくぞんざいだった。いつも傷つけないようにと細心の気を払ってくれていたのに、そんな姿は幻だったような気がしてくる。今の義之は加減もなにもなく、ただ力任せに私の身体を撫で回していた。
私も私で、気持ちの良さなんてどうでもいいような心持ちだったから、敏感な部位をどれだけ刺激されたって感じることはない。下着を剥ぎ取られて、秘めたる場所が空気に触れても、ひやりとした感触なんてあるはずがなかった。
義之も、濡れているかどうかなんてどうでも良かったんだと思う。指で確かめることさえなしに、いきなり挿入しようとした。
「――――ぃたいっ」
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