綺麗になんてなれない

20/25
前へ
/25ページ
次へ
 なんの構えもなく呆けたまま、義之の好きなようにさせていたら、破瓜のとき以来の強烈な痛みに襲われて、勝手に喉から悲鳴がほとばしった。  私に覆いかぶさって下を向いたまま腰を進めていた義之が、ピタリと動きを止めた。  非難するために声を上げたわけではないけど、あんな声を出したら、さすがに謝ってくれるのだろうか。  それともさらに続行して、私が濡れるように愛のない愛撫でもする?  選択権などとうに失った私は、ただ黙って義之の次の行動を見つめていた。  義之の行動はどちらでもなかった。  彼はそのままじっと動かず、私はただ彼の反応を待っていて、二人だけの狭い部屋に重苦しい沈黙が降りた。  この重たい無音の間を、私はどうしたらいいのだろう。  義之はいったいなにを望んでいるのだろうか。  セックスだけしていればいいというなら、勝手に続ければいい。  セックスもいらないなら、私を部屋から追い出して。  少しでも心を開いてくれるなら――きっと彼は謝罪してくれるはず。  義之の意思に従うしかない私は、彼から動いてくれるのを待つしかないのに……なにを思っているの?  なすすべもなく、じっと俯いた義之の頭頂部を見つめていると、震えるような呼吸音がかすかに聞こえるのに気がついた。     
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加