綺麗になんてなれない

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「お前、それなに。パクチーレモネード? どんなゲテモノだよ……」 「えっ、美味しそうじゃない? 飲んでもないのにゲテモノ認定なんて失礼だよ」  まだ自分でも味を確かめていなかった私は、早速ペットボトルの口を開けて飲んでみた。  レモンの爽やかな香りと酸っぱさがふわっと口内に広がったかと思うと、パクチー独特の強烈な風味がガツンとレモンを押し退けて鼻に抜ける。自他ともに認めるパクチー党の私はにんまりした。 「やっぱり美味しい。義之も飲んでみてよ」 「いやいや、無理だろマジで……」  押し返そうとする義之の手に私はペットボトルを無理やり握らせた。 「一口でいいから」 「ったく、なんの罰ゲームだよ……。一口だけだからな」  ひと息にくいっとペットボトルを傾けて、液体が口内に流れ込んだ瞬間、義之は滝に打たれる修行僧の顔になった。  そのまま無心でごくりと飲み下した義之は、しばらく目を閉じて難しい表情をしていたかと思うと、おもむろに一声発した。 「カ」 「か?」 「……カメムシ」  内容があまりにあんまりで理解するのにしばらくかかった。意味が分かって私は義之をきっとにらむ。 「ほんっと失礼。あんな虫と一緒にしないでよね」  私はぷりぷり怒りながら義之からペットボトルをひったくった。     
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